この作品は鏡の奥行きを利用したアニメーション装置です。体験者は覗き穴から鏡を見ることで、鏡の中にのみ精霊を観測することができます。自分たちの現実空間を映し出す鏡の中に、現実空間では見えないものを見たとき我々はいったいどんな感情を抱くでしょうか?この作品はその問いについて模索したものです。
この作品のモチーフは弥生時代に使われいた銅鏡から来ています。かつて、鏡は空間を映し出すという一面から、人々は神秘的な印象を鏡に抱いていました。鏡には神の力が宿っているとされ、神や精霊を祀るための道具として使用されていました。
しかし現代では、鏡の原理も解明され神の力でもなんでもないと人々は思っています。さらにはガラス鏡の大量生産により、いまの人々は鏡を神秘的なものではなく、生活便利品として鏡を扱っています。
では、今の時代において鏡に神秘性を持たせるにはどうしたらいいでしょうか?そこでふと私は、今の技術により鏡の持つ神の力を拡張できないか考えました。かつて人々は、奥行きのある画を映し出す要素にこそ神の力を感じていましたが、当時はなかったスマートミラーを使用し、鏡の中にしか存在しないアニマ(生命・魂)を視覚することでも鏡の神秘性を感じられると思いました。
森のジオラマを取り込んだ鏡の空間にだけ、森の精霊をひょっこり登場させることで、精霊を祀るために使用されていた銅鏡を新しい形に作り直してみました。
制作・開発:Tonali
精霊アニメーション:慶野 達哉