この作品は,情報社会で生じている多重の解釈による情報変化を,3Dモデルを用いて可視化を試みたものである.多重の解釈を構築するために,3Dプリンタと3Dスキャナを使用した.3Dプリンタはデジタル情報を実世界に召喚する一面から,対象モデルにアナログの解釈を付け加える役割を有する.それに対し,3Dスキャナは実世界の物体をデジタル情報に変換する一面から,対象モデルに対してデジタルの解釈を加える役割を備えている.これらを用いて,3Dモデルの印刷とスキャンを繰り返し,アナログとデジタルによる多重の解釈を3Dモデルに与えることができる.そして,その影響は鑑賞者が目に見える形として確認することができる.
世の中に溢れている情報は,誰かの,あるいは何かの解釈を介することで,派生した別の情報となる性質がある.そして,次第に解釈が増えるにつれ,生み出される情報はオリジナルの情報から徐々に遠ざかっていく.私たちは毎日スマートフォンなどのデバイスを通じて,テレビやSNSなど,様々なメディアの情報を取得している.そのような情報は,情報の作り手が存在する以上,多重の解釈を介したオリジナルから離れている情報だ.そして,誰もが情報発信者となり得る現代において,その情報も何処かのユーザの解釈を通して,新たな情報として再び発信されていく.しかし,メディアからの情報は独立した存在として私たちの目の前に現れ,どのような情報変化の遷移を辿ってきたのか確認することができない.そのため,オリジナルからどの程度変化したか分からない情報を目の前にしても,それをオリジナルに近い情報として汲み取ってしまう場合が生じる.そこで,そのような多重の解釈による情報変化を体感するために,3Dモデルを情報のモチーフとする情報変化の可視化を行った.この作品を通して,解釈を経るにつれて形状が変化する3Dモデルと鑑賞者との構図から,多様なメディアの情報と私たちとの関係性を見出していく.
An interpretation alters contents of information. Then, the more the information has the interpretations, the more it is different from the original information. By using devices such as a smartphone, we get a lot of information from multiple media such as TV and SNS. The media information is made by someone, so it has some interpretations. In addition, somebody receives the information and posts his/her article about it based on his/her interpretation. However, when we view the information through the devices, we cannot check how much the information is different from the original information. Hence, even if we are faced with the information that has multiple interpretations, we may take it as information that is close to the original. In order to experience the information change by multiple interpretations, I created the work that visualizes the information transition by using a 3D model. In this artwork, the relationship between us and the media information is discovered through the relation between the viewers and the 3D models.